卒後、私は、病院歯科医として、重篤な疾患を持った入院患者さんの治療や、新米の口腔外科医として、外来での小手術や口腔外科の入院患者さんの管理などをおこなっていました。
「三井記念病院」という看板を背負っていたから、何とかやれていただけで、すべてにおいて未熟でした。
さらによくばりな私は、すべてができる有能な歯科医を目指していたので、義歯や矯正治療にも積極的におこなっていました。

それから、数十年、今、自分自身の自画像を正確に描くことはできません。
ただ、今も、すべてができる有能な歯科医を目指しております。
私を頼ってきてくれる、ごくごく少数の患者さんの治療に生きがいを感じております。
私は決して、セールストークの上手な、説明好きな歯科医ではありません。

また、ソフトな雰囲気をもった社交的な人物でもありません。
たぶん、その反対だと思います。
私は、単に「歯科医」という「職人」にすぎません。
しかも職人という言葉が大好きです。「たかが職人」が気に入っているのです。
優れた職人を目指せば、「哲学」が必要になります。
懐疑と思考、私の場合は悔恨も含めた日々です。
縁があり、信頼いただけるのなら、ありがたいことと思っております。
2023年 夏