ちゃんと治して

「咬むと何となく痛い。特にゴマやコショウをかむと痛いんです。」Aさんは,初診の時から本当に困っていると訴えていた。

こことは違う歯医者さんで2年前に治療したんですけど、かぶせてからも痛かったんですけど、しばらく様子をみてくださいと言われたんですけど、今も痛いんです」

痛いといっている左上の第一大臼歯にはセラミック冠が入っている。せっかく費用をかけてきれいな冠をいれたのに、咬むと痛いとは大変残念なことだ。

とにかくレントゲンをとることにした。

レントゲンではに明らかな根尖病巣(歯の根の炎症像)はない。Aさんにそう告げると、Aさんは、

「レントゲンではなんでもないのかもしれませんが、コショウを咬んだ時なんかは、ビリと飛び上がるように痛みがはしるんです。」とさらに強く訴えた。詳しく調べるために、その歯だけのCTをとった。
①3根がつめられているが、いずれも根尖病巣はない。

②根管治療は十分な治療とは言えない。

口蓋根で 2.8ミリ、頬側根で2.9ミリ:2.8ミリそれぞれ不足している

レントゲンでは根尖病巣がなくても、症状がある場合はよくあることだ。また、不十分な治療のように見えるが、根管がつまっていて、それ以上治療ができない場合もある。

しかし、症状がある以上、また不完全である以上再治療すべきだろう。
ただ問題なのは、この歯を再治療するということは、セラミック冠を壊して治療するということであり、壊せば、再度かぶせなおす必要があるということだ。当然ながら、治療費の問題がある。
Aさんは再治療を希望した。CTで確認しながら根管治療を終えた。グラスファイバーで歯を補強し下の歯とかめるように「かり歯」をいれた。2週間の経過観察の間、全く症状はなかった。そこで、セラミック冠を再びいれた。
「2年前に、払った治療費はなんだったんでしょうかネ」とAさんはあきらめ顔で帰って行った。

全くの一般論だが、医療においては、行った医療行為に対して報酬を請求するもので、結果を保証するものではない。

例えるなら、海でおぼれた人がいたとしよう。当然ながら、心マッサージや人工呼吸が行われる。その際、その人が無事生還しない場合であっても、救急蘇生治療費は請求されるということだ。

これを歯科に適用すれば、根管治療を行ったのだから、根管治療費を、セラミック冠を入れたのだから冠の費用を請求する。そして、少なくとも2年弱は歯として使えており、2年後に痛みがでることを予想することはできない。

だから全く問題はないのだということになる。参考までに、保険治療においても、補綴管理期間は2年となっている。
だが、私自身が患者になった時、上記の理屈を受け入れられるかとなると、勿論受け入れられない。

10万以上のお金が消えてしまったことに釈然としないからだ。

保証をしてれる歯医者で治療をすればよかったのではという人もいるかもしれない。確かに、インターネット上では、そういう歯医者さんをたくさんみつけることができる。しかし何を保証してくれるのだろうか?割れたセラミックか、それとも痛みがなく普通にかめることだろうか。CT写真でわかるように、根管治療の質が最大の問題なのであり、セラミックという交換可能な単なる工業材料ではない。セラミックなど保証してくれても全く意味がないのだ。

百歩ゆずって、保障をしてくれるという歯医者に再度、根管治療をしてもらったとして、治癒させれる保証はいったいどこにあるのだろう。
このケースでは、再治療がうまくいき一応の解決をみたけれど、もし、抜歯しなければならないとなったらどうだろう。

Aさんはきっと怒ってしまうかもしれない。抜いたらどうするのか?ブリッジにするのか、インプラントにするのか、悩ましい選択をせまられることになる。
また、自分の歯は絶対抜きたくないという思いで、著名な根管治療医をネットで探し、高額な治療費をだして治療した。

根管治療医は専門医なので、歯をかぶせるのは他の歯医者にしてもらったが、やはり痛いといった場合はどうだろう。
話はどんどん複雑になってくる。

このような問題を解くカギは「心眼」と「信頼」以外にはないと考えるのだが、いかがでしょうか。

 

 

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