あなたはどのくらい歯周病についてご存知でしょうか?

質問1 何回か歯ぐきが腫れたり出血したことがあるが、ブラッシ ングで血を出したので、今は大丈夫だ。歯医者に行くほどじゃないと思う。

質問2 テレビで、歯ブラシや歯間ブラシ、歯磨き粉やの洗口液のテレビCMをよく見る。こういう製品をCMでやっているように使っていれば、歯周病にならないと思う。

質問3 歯周病かなと思って、歯医者に行ったことがあるが、歯石をとったり、磨き方を指導されただけで、治療らしい治療を受けたことがない。

質問4 そのそも、歯周病の治療はブラッシング以外ないと思う。

質問5 たかが、歯の病気なので、大したことはない。抜けばそれでおしまいだ.

 

私はこう考えています。

質問1について

歯周病の特徴は、大した症状をださないということにあります。前回は三日で痛みがとれた。今ちょっと痛いが、反対側でかめば何とかなる。とか、膿をうまく出す方法を知っている。いつもそういう方法で切り抜けれる。などです。

顔が変形するほど腫れるなんていうことはめったにありません。

生きるためには、食物を体の中に入れなければなりません。食物は口からしか入れれません。その食物も滅菌などされていません。つまり、歯肉粘膜は皮膚同様、強力な防護膜なのです。もともと丈夫にできているのです。

その防護膜が腫れて壊れる。それが、歯周病という炎症なのです。

ここに、歯医者に行く理由があると私は考えます。

症状はなくなっても、病気がなくなったとは言えません。

ちなみに、歯周病の正式名は慢性辺縁性歯周炎と言います。

つまり、慢性化して、症状がでないのです。

症状と真の病態とは、全くと言っていいほど関係ないのです。

症状がないことは、病気が治っている。

いや少なくとも進行していないと考えるのは誤りです。

 

質問2について

CMは、売るためのCMなのです。そのために、効能もかかせないものではありますが、第一義ではありません。治りそうだと思わせること、買ってみようと刺激することが一番重要なのです。

洗口液を例にとれば、2,3分程度、口のなかに薬液らしきものが入ったところで、さほど消毒になるとは思えません。

香料やちょっとした薬剤が入っていても、ほとんどが水です。水が歯面をリンスするだけで、プラークがこすり取られたりしないでしょう。

細菌の総量が少し減るぐらいで治療効果がでるものではありません。細菌量が、十分の一や、百分の一にならなければ口臭すら改善することはないでしょう。

歯ブラシについていえば、ブラシの形や毛の細さや硬さにさまざまな工夫がありますが、それだけで、効率がよくなるなんてことは、ありえないように思います。

多くの患者さんを見ていると、きれいにすべき場所に正確に歯ブラシをあてていない。基本動作を身に着けられない人がほとんどです。つまり、CMのようにうまく磨ける人などいないのです。

口のなかは、個性そのものであり、全く同じなんて人を私は見たことがありません。ですから、歯ブラシの当て方も人によってさまざまな工夫をしなければ、あてることすらできないのです。

ここに、個人教授する理由があると思っています。ブラッシングの定番などありません。その人その人にあった磨き方、動かし方を見つけ出す必要があるのです。

本を読んで自分で読解できる方は少数でしょう。たいていは、本の内容を教える教師が必要だったのではないでしょうか。

 

質問3について

これには深い訳があります。保険治療には、ルールがあります。その通りにやらないと保険治療とみなさしません。

そのルールは誰が決めたのでしょうか。大学で歯周病を専門にしている偉い先生と、厚生労働省が決めたものです。

ですから、このルールは正しいのです。

ただ正しいことが必ずしも機能しないのが世の中です。

大学で治療を受ける余裕のある患者さんと、仕事に追われ、時間を何とか都合をつけて来院する患者さんとでは、意識も経済も違いがあるのは当然でしょう。そんな個別的なことは無視して、治療が理想的に行われることを前提にしているのが、保険の歯周病の治療と言えます。

例えば、保険のルールでは、重症な歯周病であっても、本格的な治療は、治療開始してから3か月たたないとできないことになっています。それでは患者さんのテンションも、しぼんでしまいます。歯科医の側も、期間指定があり、かつ採算の取れない低い点数の本格的歯周処置などやる気が失せてしまいます。

保険で必要な治療がなんでもできるという大義名分は、だれもやろうとしないという実体で守られているわけです。

ぶちゃけて言えば、簡単な治療だけをやっていれば、患者も先生も納得するということです。少なくとも、急性症状だけは治せたわけですから。

ですから、私は、保険のルールにとらわれないで、本格的な歯周病の治療をするには、自費治療をする以外ないと思います。そうすることで、保険指定の枠を超えもっと良い器具を使い、短期間に効率的な処置をすることが可能になり、その方にあった治療計画を立てることが可能になるのでは、と考えます。

 

質問4について

歯周病の原因は、本当はたくさんあるのですが、メジャーな原因は二つあります。

一つは、デンタルプラークです。歯垢です。

もう一つは、ポケットです。

ですから、プラークが原因の軽い歯周炎は、原因であるプラークが一定限度内にコントロールされれば治ります。さらに、浅いポケットの内部(内縁上皮)をレーザーなどで、きれいにしてあげるとさらに効果的な治療となります。

それに対して、重症な歯周病は、ポケットがも深くなり、歯を支えている骨自体も大きなダメージをおい不整な形に吸収されています。つまり原因は深いポケットにあるわけです。ですから、そんな方に、ブラッシング指導をいくらやっても、劇的に治ることはありません。

ポケット自体をとり除き、吸収された骨の再生が治療目標となるわけです。


つまり、歯周病の外科処置(Fop)が必要になるわけです。

現在ではリグロス(商品名)のようなかなり効果のある再生治療や、骨添加や膜使用による骨造成治療ができます。

しかし、残念ながら、そのような情報があまり知られていない。

理由は、歯周病の外科処置は案外難しい。できる先生が限られている。

さらには、患者さんのなかには、手術と聞いただけで尻込みする方がいます。しかし、放置すれば、歯が抜けるだけですし、治る方法があるのに、感情的に反応しても問題の解決にはなりません。

また、静脈鎮静法を用いれば、それほど不安を抱かずに手術ができます。私のところでは、静脈鎮静法を多用しております。

質問5について

これには三つの問題があります。

一つは、自分の歯もろくに管理できないという、あなたの絶望的な悪しき習慣が治っていないということです。

悪い習慣や意識を治すのは、あなた自身しかいません。私たち歯科医は単なる気づきを促し、具体的な手技をやって見せるだけにすぎません。実践者はあくまでもあなたです。

二番目には、一本の歯がぐらつき,ついに抜けた時には、その次に抜ける歯も、たいてい用意されています。

一本の歯の喪失は、残った歯の余命まで極端に短くしていくのです。こうした、負の連鎖を断ち切ることができません。

三つ目には、歯周病は、他の慢性疾患に関係しているということです。

よく言われているものには、糖尿病、高血圧、心臓疾患、早産や低体重児。さらには認知症すら関係していると言われています。

ですから、歯周病をなおす努力、行動をとるべきではないでしょうか。 

 

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